ひざを動かして痛みを治療

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体を鍛える治療法『運動療法』について

膝の痛みに対して有効な治療法の一つに「運動療法」があります。
適度な運動を継続して行うことで、筋力、体力、柔軟性といった身体機能を高め、膝を強くして負担を減らしたり肥満やストレスを解消することで痛みの解消・予防を図ります。
ここでは運動によって得られる効果、痛みが和らぐ仕組み、運動の種類などについて解説します。

<目 次>

  1. 運動療法の特徴と種類
  2. 運動の種類
  3. 運動時のポイント・注意点
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1.運動療法の特徴と効果

1-1.こんな痛みに有効

組織を強化してひざを支える

運動療法の目的は、膝まわりの筋肉・骨・靭帯といった組織を強化したり関節の動きを良くすること、つまり膝を強くすることです。膝が強くなれば日常生活における様々な動作や体重による負荷を支え、吸収する働きが強まり、痛みも軽減します。よって、加齢や運動不足によって膝が衰えたことが原因で生じる「慢性的な痛み」に対して特に有効です。そのほか靭帯が切れる靭帯断裂などのケガにおいても、筋肉を強化して靭帯の機能の一部を補うこともできます。

膝に激しい痛みがある場合ば、膝に負担をかけることは極力避けて安静状態を保つのが原則です。しかし膝を大事にして安静にしすぎると膝は弱くなる一方であり、回復を遅らせ、かえって状態を悪くしてしまうこともあります。症状が落ち着いてきて膝をある程度動かせるようになったら、多少痛みが残っていても歩いたり仕事をしたり無理のない範囲で体を動かしたほうが、安静にするよりも治りが早いことが分かっています。

1-2.痛みの予防にも効果的

痛み止めの薬を服用したり、膝を冷やしたり温めたり、サポーターを付けて膝を保護するといった治療法は、主に"現在生じている痛み"を軽減する目的で行われます。痛みの軽減効果が比較的早く現れるため、膝の疲れやケガによって一時的に生じた痛みを解消するのに有効です。
しかし膝の老化が原因の慢性痛に対しては一時しのぎにしかならず、痛みの完治や予防効果はほとんど期待できません。

それに対し、運動療法は症状を今以上に悪化させず、かつ今後の発生を予防することが主な目的となります。
効果が出るまで時間はかかりますが、痛みの元となっている「膝の衰え」を改善することができるため、将来的にも痛みが小さくなる・発生しにくくなるといった高い予防効果も得られます。

1-3.運動によって得られる具体的な効果

  • 筋力が高まり、骨も丈夫になる
  • 筋肉や靭帯の緊張が和らぎ、柔軟性も高まる
  • 関節の可動域(動く範囲)が広くなり、動きも良くなる
  • 体力と抵抗力(免疫)が高まり、ケガや病気をしにくくなる
  • 心肺機能が向上し、新陳代謝も良くなって体の老化が遅くなる
  • エネルギー(カロリー)を効率的に消費できる
  • ストレス解消になる

こうした効果の全てが膝の痛みの解消や予防につながります。

色々な運動でひざを鍛える

膝を支える力が強まる

太もも前面の筋肉「大腿四頭筋」や、膝を取り囲む靭帯が鍛えられると、様々な動作や体重による荷重、外部からの衝撃などが吸収・分散され、膝関節にかかる負荷が小さくなります。痛みが生じにくくなるだけなく、骨がこすれあって軟骨が削れることも少なくなります。

血行が良くなる

運動によって体が温まり、筋肉や靭帯の緊張が和らいで血液の流れが良くなります。
軟かくなった筋肉や靭帯は負荷を吸収する働きが強まり、また血行が良くなることで痛みの元となる炎症物質や疲労物質が流れ出て行きやすくなるため、痛みが和らいだり回復が早まります。

病気やケガの予防になる

運動によって身体機能が高まると、無理な姿勢をとってもバランスを崩しにくく、物にぶつかったり転倒する機会が少なくなります。筋肉や骨が丈夫になることで、転倒や接触などの事故に会った時も骨折などのケガをしにくくなります。
また、体力がついて抵抗力(免疫)も高まり、病気にかかりにくくなります。運動によって血液の循環が良くなり、心肺機能も向上して、特に心臓病や脳卒中、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の予防に役立ちます。

肥満を防ぐ

運動で肥満解消

運動不足や食べ過ぎによって肥満になると、体重による膝への負荷が増えて痛みの発生や悪化につながるほか、様々な病気を発症しやすくなります。
運動をすることで多くのエネルギーを消費でき、肥満の解消につながるだけでなく、体の筋肉量が増えて基礎代謝(何をしなくても消費されるエネルギーの量)が増えるため、太りにくい体質になります。

ストレス解消になる

不安やストレスなどの心の不調が大きくなると、体の調子を整える自律神経や、痛みを制御するシステムの働きが低下して痛みを増大させます。通常なら感じないほどの小さな痛みでも大きな痛みとして感じるようになります。
適度な運動を行うことはストレス解消にも効果的であり、心と体の健康を保つのに最適です。軽い運動を行うことは、うつ病などの精神的な病気の治療法としても取り入れられています。
また、痛みは快感によって軽くなることが科学的にも証明されています。ゆっくりと景色を楽しみながら散歩をするなど、運動によって爽快な気分を味わうことが直接痛みの軽減にもつながります。

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2.運動の種類

運動療法で行う内容は、種類別に大きく3つに分けられます。

筋肉や骨に負荷をかけて強化する「筋力トレーニング」、膝をゆっくり曲げ伸ばしする「柔軟体操・ストレッチング」、ウォーキングや自転車こぎなどで全身を動かす「全身運動(有酸素運動)」です。
症状の程度や痛みの原因に応じて適した運動を行い、症状が良くなるにつれて段階的に行う種類を増やしてゆきます。

2-1.筋力トレーニング

ひざの筋肉を鍛えるトレーニング

筋力トレーニングとは、体の特定の箇所に集中してやや強めの負荷をかけることで、筋肉、靭帯、骨などの組織を強化する運動です。膝の筋力トレーニングでは、主に膝関節の周囲の筋肉や靭帯を強化することで、膝を支える力を高めます。

運動の目的・得られる効果

  • 筋肉、骨、靭帯などの組織が強く丈夫になる
    →膝を支える力が強くなり、安定感も増す
    →膝にかかる負荷が減って痛みが和らぐ。また、将来的にも痛みが起こりにくくなる(高い予防効果)
  • 筋肉の量が増えて血行(血液の流れ)がよくなる
    →炎症物質や疲労物質が流れ出て行きやすくなる
    →痛みや疲れがとれやすくなる
  • 筋肉量が増えることで基礎代謝が上がり、エネルギーが消費されやすく太りにくい体質になる

筋力トレーニングは治療よりも予防に効果的で、痛みが生じる前に行うことで最も効果を発揮します。痛みが出始めてから筋肉を鍛えても、十分な筋肉がつくまでには時間がかかります。早く筋肉をつけようとして無理をすると逆に膝を痛めてしまいます。

また、特別に筋力トレーニングを行う必要があるのは、筋肉の衰えや膝の不安定さを感じているような人です。普段体を動かす機会がほとんどない高齢者や若い女性に多いです。
普通に運動ができるくらいの人なら必ずしもトレーニングを行う必要はありません。ウォーキングなどの全身運動や柔軟体操でも必要な筋肉は十分につきます。ただ、筋肉がないよりはあった方がいいのは確かなので、頑張って鍛えること自体には問題ありません。他の運動と合わせて行うことで、痛みの予防効果がぐっと高まります。

鍛える筋肉

膝のトレーニングでは主に「太もも」の筋肉を鍛えます。膝の曲げ伸ばしをするための筋肉であり、体重による負荷を支えて膝に伝わるのを和らげる筋肉でもあります。

膝の動きをコントロールする筋肉
ひざを動かす太腿の筋肉

  1. 大腿四頭筋(だいたいしとうきん
    太ももの前面にある筋肉です。膝を伸ばす時に使われます。
  2. ハムストリングス
    太ももの裏側にある筋肉です。膝を曲げる時に使われます。
トレーニング法

膝に大きな負荷をかけると逆効果なため、重しを使わない軽めのトレーニングや、膝ををあまり動かさずに筋肉に力を込める「等尺性筋収縮(アイソメトリクス)」が主になります。
具体的なやり方や、トレーニング時のポイント・注意点については別項で詳しく解説しています。


2-2.柔軟体操・ストレッチング

ひざ関節を伸ばす柔軟体操

柔軟体操やストレッチングとは、ゆっくりとした動きと呼吸で、筋肉や靭帯、関節を伸ばす運動です。

運動不足が続いたり、膝が老化して関節の変形が進んだ状態になると、関節内の炎症や、筋肉の衰えによる血行の悪化が起こりやすくなり、それによって関節がスムーズに動かなくなったり、動かせる範囲が狭くなります。具体的には膝を伸ばしきったり、深く曲げることができなくなります。また、体重がかかった時に痛みが起こりやすくなります。こうした症状に有効な運動がストレッチングです。

運動の目的・得られる効果

筋力トレーニングの効果が「膝を強くして負荷を減らすこと」や「膝の安定」であるのに対し、ストレッチングの主な効果は「膝の動きの改善」、つまり、膝が動く範囲(駆動域)を広げて曲げ伸ばしをしやすくすることです。

  • 関節の動きが良くなり、膝の曲げ伸ばしがしやすくなる
  • こわばった筋肉が柔らかくなって血行が良くなり、痛みが軽くなる
  • 体の深部の筋肉「深層筋(インナーマッスル)」が鍛えられ、体のバランスが良くなりケガをしにくくなる
  • 膝の組織が刺激されて新陳代謝が良くなり、長期的にも痛みが起こりにくくなる
対象となる筋肉
脚の筋肉(背面)
柔軟体操で伸ばす足の筋肉

膝を伸ばすための筋肉「大腿二頭筋」、膝を曲げるための筋肉「ハムストリングス」、そのほか、ももの内側の筋肉「内転筋」、ふくらはぎの筋肉「腓腹筋」など、下半身全体を伸ばします。

ストレッチング法

道具を使わず自宅で手軽にできる体操がほどんどです。
具体的なやり方や、運動時のポイント・注意点については別項で詳しく解説しています。


2-3.全身運動(有酸素運動)

膝にもやさしい有酸素運動

全身を動かす運動の中でも、ウォーキング、ジョギング、ダンス、水泳などのように、体にかかる負荷が小さめで、長時間からだを動かして多くの酸素を取り込む運動を「有酸素運動」といいます。
走ることを例に挙げると、適度な負荷で長距離を走る「ジョギング」が有酸素運動で、強い筋力や瞬発力を必要とし、体に大きな負荷がかかる「短距離走」は無酸素運動です。

膝の治療では、軽めのウォーキングや水中運動など、膝にあまり負担がかからないものが主になります。

運動の目的・得られる効果

  • リズミカルな呼吸で酸素を多く取り込み、エネルギー(カロリー)を効率的に消費できる
    →肥満の解消効果が高く、体重による膝への負荷が減る
  • 心肺機能や血管の機能が高まり、新陳代謝が良くなって膝の老化を遅らせる
  • 骨や筋肉などの組織を無理なくバランスよく鍛えられるため、体が丈夫になり安定感が増してケガをしにくくなる
  • 体力や抵抗力(免疫力)が向上し、病気にかかりにくくなる
  • 苦痛を感じない範囲で気持よく運動を行うことで、爽快な気分になりストレスが解消される
行う時期・段階

はじめは筋力トレーニングやストレッチングから入り、ある程度の期間(数ヶ月〜)継続して症状がだいぶ良くなってきたら、全身運動も取り入れましょう。

全身運動の種類とやり方

膝の負担が少ない「ウォーキング」や「水中運動」がお勧めです。
具体的なやり方や、運動時のポイント・注意点については別項で詳しく解説しています。

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◆運動のポイント・注意点

運動療法は適切に行われないと十分な効果を得られなかったり、かえって症状を悪化させてしまう危険性もあります。全ての運動に共通するポイントや注意点を解説します。

1.無理せずできる範囲で行う


  • 運動は膝にあまり痛みを感じない範囲で行いましょう。最初は負荷を小さめにし、一度に行う時間も短めにします。慣れてきて物足りなくなってきたら、段階を経て徐々に負荷や時間を増やしていくのが基本です。
  • 一つ一つの動作はゆっくりと行いましょう。
丁度よい負荷の目安

全般的に見て、体に大きな負担をかけずに最大限の効果を得るには、「ややきつい」と感じる程度が良いようです。柔軟体操・ストレッチングなら、やや痛みを感じるが筋肉が伸びて気持ちよさも感じる痛気持ちいいくらいが良いとされます。ウォーキングなどの全身運動なら息が軽くはずんで会話もできるくらいの強度で続けましょう。

体に異常を感じたら休む

運動中や運動後に膝の強い痛みや動きの違和感、気分の悪さなどを感じたらすぐに運動を中止し、症状が治まるまで安静にしましょう。症状が良くならない時は速やかに医療機関を受診してください。特に以下のような症状が見られた場合は、例え症状が治まったとしても大事をとって診察を受けておくことをおすすめします。

  • 強い痛みやしびれを感じる。または足腰に力が入らない
  • 頭痛やめまい、激しい動悸、息切れなど
  • 冷や汗が出たり、気分が悪くなる

2.定期的に行う・継続する

運動療法は他の治療法と違ってすぐに効果が現れるものではありません。痛みを改善させるには地道な努力が必要です。すぐに効果が出ないからといってやめてしまうと、ますます症状は悪化してしまいます。毎日少しずつでも良いので続けていくことが大切です。一度習慣化することができれば比較的楽に続けられるようになります。

継続するための工夫

普段運動する習慣がなく、なかなか続かない人にオススメなのが、一緒に運動をする仲間を作ることです。夫婦や友人など仲の良い人と一緒に行ったほうが楽しくて長続きします。趣味のスポーツサークルや会員制のスポーツクラブを利用するのも良いでしょう。
どんな運動をするか決める際にも、一般に膝に良いとされているものを選ぶより、自分が行って楽しいかどうかを基準としたほうが続きやすいです。
また、初めからきつい運動を行ったり高い目標を設定せず、まずは外出する機会を多くしたり、気分転換の散歩を日課にしたり、家事をしっかりこなすなどの簡単なことから初めてみるのも効果的です。ほかにも目標を設定して達成したら自分にご褒美をあげるとか、毎日体重の記録をつけるなど様々な方法があります。

3.しっかり準備してから行う

指導者・主治医の指示を受ける

豊富な運動の経験や予備知識もなく自己判断だけで安易に運動を初めてしまうと、思わぬトラブルに見舞われる恐れがあります。
運動経験の少ない人や、痛みなどの症状が比較的重い人は、運動を行っても良いか、どんな運動をどれくらいすればよいかなど、事前に医師やスポーツトレーナーと相談して行った方が安全です。特に「骨粗しょう症」の患者、「変形性膝関節症」で関節の変性が進んでいる人、痛みが激しい人、持病のある人、通院中の人などは、必ず事前に医者の指示を仰いで下さい。
長年ひざの痛みとつきあっている人の中には病院に行かない人も多いですが、その場合は軽めの運動をゆっくり続け、痛みが強くならないかどうか確認しながら行いましょう。

運動の前後の準備運動を忘れずに

思わぬケガや痛みの悪化を起こさないよう、運動の前後には入念すぎるくらいの準備運動(ウォーミングアップ)と整理運動(クーリングダウン)を行い、特に下半身と腰の筋肉や関節をしっかりほぐしておきましょう。

4.いくつかの運動を組み合わせて行う

筋力トレーニング、ストレッチング、全身運動の3種類の運動はそれぞれ得られる効果が異なります。一つだけ行うよりも複数並行して行うほうが様々な効果が得られ、治療と予防の効果は高くなります。無理に全て行ったり、特に必要性を感じない運動まで行う必要はありませんが、まずは自分に一番必要と思われるものから試し、慣れてきたら徐々に色々な運動法を取り入れていきましょう。

関連項目


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