運動療法1.筋力トレーニングで膝を安定させる

膝を支える力を強くする「筋力トレーニング」
<目 次>
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1.筋力トレーニングの効果とポイント
◆得られる主な効果
- 筋肉、骨、靭帯などの組織が強く丈夫になる
→膝を支える力が強くなり、安定感も増す
→膝への負荷が減って痛みが和らぐ。また、将来的にも痛みが起こりにくくなる(高い予防効果) - 筋肉の量が増えて血行(血液の流れ)がよくなる
→炎症物質や疲労物質が流れ出て行きやすくなる
→痛みや疲れがとれやすくなる - 筋肉の量が増えて基礎代謝が上がり、エネルギー消費量が増えて太りにくい体質になる
◆トレーニングを行う際のポイント・注意点
- 体を締めつけない、動きやすい服装で行いましょう
- リラックスしてゆっくりとした動作で行いましょう。反動をつけてはいけません。
- 呼吸を止めないで行いましょう。息を吐きながら力を入れ、力を抜く時に息を吸います。
- 決して無理をせず、大きな痛みを感じない範囲で行いましょう。
初めから大きな負荷をかけたり、限度を超えてやりすぎると、逆に痛みを悪化させたり膝関節の劣化を早めてしまいます。
最初は軽めの負荷で行い、筋力が付いてきたら徐々に強度を上げていくようにします。「ややきつい」と感じるくらいで行うと最も効果が高いとされます。 - 運動中や運動後に膝の強い痛みや動きの違和感、気分の悪さなどを感じたらすぐに運動を中止し、症状が治まるまで安静にしましょう。良くならない時は速やかに医療機関を受診してください。
- 十分な運動効果を得るには、少しずつでも良いので「続けること」が大切です。できるだけ毎日継続して行い、朝晩2回続けると効果的です。ただし、痛みが強い時や疲れがたまっている時は無理をせず、必ず膝を休ませてください。
- 筋肉が十分に鍛えられまでには時間がかかります。すぐに効果が現れるものではありませんので、焦らずに続けましょう。
- 運動前にストレッチング(柔軟体操)で筋肉を伸ばしておくと、トレーニング後の筋肉痛を軽くしたり、運動中の不慮のケガが少なくなります
- 運動経験の少ない人や、痛みなどの症状が比較的重い人は、医師やスポーツトレーナーと相談して行った方が安全です。特に持病のある人、通院中の人などは、必ず事前に医者の指示を仰いで下さい。
運動全般のポイントと注意点については下記を参照してください。
2.太ももの筋力トレーニング
膝を支えたり、膝を曲げ伸ばしするのに重要な役割を果たすのが、膝から上の「太もも」の筋肉と、膝を囲む靭帯です(参考:膝の構造)。膝の筋力トレーニングで最も重点的に鍛えるべき部位です。
2-1.太もも前面の筋肉「大腿四頭筋」を鍛えるトレーニング
やり方@ ひざをあまり動かせない人向けの方法
- 両足を伸ばしてあお向けに寝る
- ひざに力を入れて、ひざを床に5〜6秒間押し付ける。これを20〜30回程度繰り返す
- ※ひざをあまり伸ばせない人は、下図のように、膝下にタオルを置いて押し付けるのもよい
やり方A 足上げ体操
<負荷の小さい方法>
- あお向けになり、片方の膝を立てて90度に曲げ、もう一方はまっすぐ伸ばす
- 伸ばした方の脚をゆっくりと上げていく
- 床から10cm程度のところまで上げたら脚を止め、そのまま5秒間保つ
- 脚をゆっくり下ろし、5〜10秒間休む。これを10回程度繰り返す。反対側の脚も同様に行う
<負荷の大きい方法>
- あお向けになって両手を頭の後ろに組み、つま先をひざ方向に反らして、ひざをしっかり伸ばす
- つま先を反らせたまま、膝が曲がらない範囲で片方の足を引き上げた状態を5秒間キープする
- ゆっくりと足を下ろす。これを15回繰り返し、反対側の足も同様に行う
やり方B イスを使った足上げ体操
<負荷の小さい方法>
- 両手でイスのふちをつかみ、浅く腰かける。一方の脚は膝を曲げて床につける。もう一方は足首を90度に曲げて前に伸ばす
- 伸ばした方の脚をゆっくりと上げ、床から10cm程度のところで止め、そのまま5秒間保つ
- 脚をゆっくり下ろし、5〜10秒間休む。これを10回程度繰り返す。反対側の脚も同様に行う
<負荷の大きい方法>
- 椅子に深く腰かけ、両手を片方の足のひざの下で組み、ひざを軽く持ち上げる
- 太ももに力を入れ、ひざをまっすぐに伸ばした状態を5秒間キープする
- ゆっくりと足を下ろす。これを10回繰り返し、反対側の足も同様に行う
- ポイント:腕でひざを引き寄せない。上半身で反動をつけない
やり方C スクワット
<負荷小さめの方法>
- 足の指先と膝を正面に向け、足を肩幅ぐらいに広げて立つ
- ゆっくりと膝を60度ぐらいに曲げて腰を落とす。痛みのある時は無理をしないこと
- ゆっくりと膝を伸ばして元の状態に戻る。これを10回程度繰り返す。
- ※膝がつらい時は壁に手をついて行うとよい
<負荷大きめの方法>
- 背すじを伸ばして両手を頭の後ろで組み、両足を肩幅に開いて立つ
- あごを突き出すように正面を見て、お尻を突き出すようにして、ひざが90度くらいになるまで腰を落としていく。
この時、上から見てつま先が太ももに隠れていれば、ひざが開いたり閉じたりしていない理想的なフォームになる - ゆっくりと膝を伸ばして立ち上がり元の状態に戻る。これを15〜25回程度繰り返す。
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2-2.太もも裏面の筋肉「ハムストリングス」を鍛えるトレーニング
<負荷小さめの方法:スタンディングレッグカール>
- 壁に向かって手を添えて立ち、膝を壁に軽く当てて固定する
- 片方の足の足首を曲げ、かかとをお尻に近づけるようにして、ゆっくりと膝を曲げた状態を5秒キープする
- 曲げた足をゆっくり下ろして膝を伸ばす。これを10回程度繰り返す。反対側の脚も同様に行う
<負荷大きめの方法:ヒップアップ>
- あお向けに寝る。両足を肩幅に開き、ひざを立てて90度に曲げる。両腕を軽く開き、手の甲を上にして床を押さえるようにする
- 両腕で体を支えながら、太ももとおしりに力を入れ、お尻を真上に持ち上げる。この状態を5秒キープする
- ゆっくりとお尻を下ろし元の体勢に戻る。これを10回程度繰り返す
- ポイント:足の裏は床につけたまま動かさない。お尻を持ち上げた時、胸からひざにかけてまっすぐなラインになるようにする
2-3.太ももの外側の筋肉を鍛えるトレーニング
やり方@ 横上げ体操
<負荷小さめの方法>
- 枕やクッションを使って横向きに寝る。手は楽な位置に置く。下側の足は90度に曲げ、上側の足は伸ばす。
- 上側の足を、膝を伸ばしたままゆっくりと上げていく
- 床から10cm程度のところまで足を上げたら、そのまま5秒間保つ
- 5秒間かけて足をゆっくり下ろし、5〜10秒間休む。これを10回程度繰り返す。反対側の脚も同様に行う
<負荷大きめの方法>
- 横向きに寝る。手は真上に伸ばし、その上に頭を乗せる。下側の足は90度に曲げ、上側の足は伸ばす。
- 上側の足を、膝を伸ばしたままゆっくりと上げていく
- 膝が曲がらない範囲で、足をできる限り高く上げ、そのまま5秒間保つ
- 5秒間かけて足をゆっくり下ろし、5〜10秒間休む。これを10回程度繰り返す。反対側の脚も同様に行う
やり方A チューブトレーニング
- 足を前に投げ出して座る
- 膝より上にエクササイズ用のゴムをかけ、力を込めて左右に広げる
- そのまま5〜10秒間保つ
- 足をゆっくり戻す。これを10回程度繰り返す。
【参考】
2-4.太もも内側の筋肉「内転筋」を鍛えるトレーニング
やり方@ 横上げ体操
- 横向きに寝る。上側の足は90度に曲げて下側の足の後ろに置く。下側の足はまっすぐ伸ばす。
上側の手は体の前に置いて体を支える。下側の手は楽な位置に置く。 - 下側の足を、膝を伸ばしたままゆっくりと上げていく
- 痛みのない範囲で、上げられるところまで上げたら、そのまま2,3秒間保つ
- 足をゆっくり下ろす。これを10回程度繰り返す。反対側の脚も同様に行う
やり方A ボールエクササイズ
- 床に足を伸ばして座る
- ボールを太ももの間に挟む。手は楽な位置に置く
- ボールが床から浮かないように注意しながら、ボールの中心に向かって両ももで5秒間ほど、ゆっくりと力をこめていく
- これを10回程度繰り返す
- ※使うボールはゴムボール、バレーボール、サッカーボールなど
【参考】
3.ふくらはぎの筋力トレーニング
ひざから下のふくらはぎ周辺の筋肉を鍛えるトレーニング方法を紹介します。
やり方@ つま先立ち
- 足の指先を正面に向けて立つ。両手は自然に下ろし、両足はそろえるか軽く開く
- そのままかかとを上げてつま先立ちする。5〜10秒ぼど保ったらゆっくり戻す。これを10回程度繰り返す
- 膝がつらい時は、壁に両手をついて行う。負荷を大きくしたい時は、写真右のように低い台の上につま先を乗せて行ったり、ダンベルなどの重しを持って行う
やり方A ストレッチングも兼ねた体操
筋肉への負荷は小さめですが、膝に体重がかからないため、膝が悪い人におすすめの方法です
- 床にあお向けになり、両脚を伸ばす
- 両脚のかかとを床につけたまま、両足首をゆっくり手前に反らし、5秒キープする
- つま先を立てるように両足首をゆっくり向こう側に曲げ、5秒キープする。これを10回程度繰り返す
- ※イスに座った状態で行なっても良い
◆関連項目
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