運動療法3.軽い負荷で全身を動かす有酸素運動

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体力をつけ、肥満や老化も防止する全身運動(有酸素運動)

全身を動かす運動の中でも特に「ウォーキング」と「水中運動」は膝の負担が少ないため始めやすく、様々な健康効果も得られます。これらの運動によって得られる効果、具体的なやり方やポイントについて解説します。

<目 次>

  1. 全身運動の効果と運動時のポイント・注意点
  2. 全身運動1「散歩・ウォーキング」
  3. 全身運動2「水中運動」
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1.全身運動(有酸素運動)の効果とポイント

◆得られる主な効果

  • 体が丈夫になる。体力や抵抗力(免疫力)が高まる
    骨や筋肉などを無理なくバランスよく鍛えられるため、体が丈夫になり安定感が増してケガをしにくくなります。また、体力や抵抗力が高まることで病気にかかりにくくなります
  • 肥満を解消する
    リズミカルな呼吸で酸素を多く取り込み、エネルギー(カロリー)を効率よく消費できるため、肥満の解消や予防に役立ちます。体重による膝への負荷が減るほか、生活習慣病予防にも役立ちます
  • 老化を遅らせ膝を若く保つ
    心肺機能や血管の機能が高まり、血行・新陳代謝がよくなって体の老化が遅くなります
  • ストレスを解消する
    苦痛を感じない範囲で気持よく運動を行うことで、爽快な気分になりストレスが解消されます

◆全身運動を行う際のポイント・注意点

  • 服装は体を締めつけない、動きやすいものを着用しましょう。
  • 思わぬケガや症状の悪化を防ぐため、運動の前には入念すぎるくらいの準備運動を行い、膝をほぐしておきましょう。運動後も軽く歩いたり膝を伸ばす整理運動を行うことで、回復を早め筋肉痛を予防できます。
  • できる限り継続して行いましょう。
    有酸素運動は一日の合計時間が長いほど効果が高まります。一回に20〜30分以上続けたり、10〜15分の運動を一日に2回行うなど、都合や体調に合わせて行いましょう。週に3日以上行うのが理想的です。
  • 無理をせずにできる範囲で安全に行いましょう。
    「軽く息が弾む程度」が目安です。限度を超えてやりすぎたり、痛みや疲れがたまっている時に無理に行うと症状が悪化する恐れがあります。
    また、運動していて気持ちいいと感じることが重要です。続けやすくストレス解消効果も高まります。キツいと感じるような負荷で行うと長続きしません。
  • 痛みが強い時や体調がすぐれない時は無理に行わずに休みましょう。
    運動中に気分が悪くなったり、膝に強い痛み、腫れ、熱感などの異常が見られたら、すぐに運動を中止して症状が治まるのを待ってください。症状が治まらないようなら医療機関を受診しましょう。特に「足腰の強いしびれや痛み、脱力感」「頭痛やめまい、激しい動悸や息切れ、冷や汗」などの症状が出た場合は、症状が治まっても大事をとって診察を受けることをおすすめします。
  • 心肺にある程度負担がかかるため、高齢者や過去に心臓病や脳卒中を起こした人は事前に医療機関で詳しい検査を受けておきましょう。どんな運動が適しているか、どのくらいの運動量が良いのか指示を受けてください。
  • しばらく運動していない人や膝の痛みが強い人は、はじめは筋力トレーニングストレッチングから入りましょう。数週間から数ヶ月程度続けて、ある程度筋肉がつき症状が良くなってきてから全身運動も取り入れていきましょう。

2.散歩・ウォーキングについて

歩くことは膝の痛みの軽減に効果的

全身運動のうち、最も膝の治療にオススメなのが「ウォーキング」です。手軽に行うことができ、多くの健康効果が得られます。ただし、「膝の痛みが強い」、「歩行障害がある」など、重い症状がないことが条件です。

◆ウォーキングの効果・長所

ウォーキングは他の有酸素運動に比べて膝への負担が軽く、それでいて骨、筋肉、関節などの組織を鍛えて膝の痛みを和らげる効果もあります。実際にウォーキングによって膝の痛みが減少することが医学的にも証明されています。
また、心肺機能を高めたり、血管の老化を防ぐといった、全身の機能を高める効果もあります。行う時間や場所を選ばず、一人で手軽にできます。費用もほとんどかかりません。景色を眺めながら、散歩の延長のように習慣として続けやすいのも大きなメリットです。

精神的な効用も大変大きいです。気持ちよく歩くことでストレス発散、気分転換になります。これらは痛みの軽減にもつながります。外の空気を吸って、太陽の光や風を感じ、眼や耳から外界の色々な刺激が入ってくると、脳の下行性疼痛抑制系が刺激され、痛みをブロックする機能が高まります。また、リズミカルに歩くことでセロトニンという神経伝達物質の分泌を促し、うつの回復・予防効果もあります。

気軽に散歩からはじめよう

ウォーキングといっても、ただ外に出て散歩するだけでも良いので簡単です。家のまわりを一周したり、近所を散策したり、ちょっと長めに歩いたり、どこかに出かけたついでに周辺をちょっと歩いてみたりと色々なやり方があります。1人で気楽に行ってもいいですし、夫婦や仲の良い友人たちとでもいいでしょう。良い景色を眺めたり、楽しいおしゃべりをしながら歩ければより楽しくなります。
最初は無理せず歩ける時間と距離で行い、慣れてきたら徐々に長くしていきます。最終的には毎日20〜30分続けられるようになるとよいでしょう。

◆効果を高めるためのポイント


  1. 「運動」であることを意識して歩く
    ただ漫然と歩くより、やや急ぎ足で、少し息がはずんで汗ばむぐらいの速さで歩くのが理想的です。
    あごをひいて胸を張り、腕を大きく振りながら歩きましょう。また、歩くときの姿勢を意識することも大切です。良くない姿勢で歩いていると、かえって痛みを悪化させてしまうこともあります。
  2. 継続して続ける
    歩く時間は一日合計20〜30分程度、1週間に3日以上歩くことを目標にしましょう。
  3. ウォーキングに適した靴をはく
    ウォーキングシューズやスニーカーなど運動用の靴を準備しましょう。 靴底が厚く柔らかいものはクッション性が高く、膝への衝撃を和らげます。また、キツすぎず緩すぎず自分の足のサイズに合ったものを使いましょう。
  4. 動きやすい服装で
    重い服や体をしめつける窮屈な服は避け、軽くゆったりとした服で歩きましょう。汗をよく吸収し、乾きの早い素材を使ったものがお勧めです。高齢者は膝サポーター、手押し車、杖なども活用しましょう。

◆理想的な歩き方

ウォーキングのフォーム
イラスト図解:歩く時の正しい姿勢

  • 膝の負担が小さい「股関節歩き」
    背筋とピンと伸ばし、膝もしっかり伸びた状態で、かかとから着地します。ひざや腰にかかる負荷が小さい歩き方です。
    歩くのに合わせて自然に手を振り、大股で歩きます。からだが左右にブレず、頭も上下に動かず一定の高さを保つのが特徴です。音で表現すると「カツカツカツ」という感じです。

  • 膝に良くない「ひざ歩き」
    膝を曲げて上体を揺らしながら歩く「ひざ歩き」は日本人に多く見られ、膝に余計な負担がかかります。
    背中を丸め、歩くたびに頭が上下に動いて、足を踏み出すたびに右へ左へと全身が揺れるヒョコヒョコとしたく歩き方です。脚を踏み出す時も着地する時も、常に膝が軽く曲がっているのが特徴です。

良い歩き方・悪い歩き方



◆注意事項

  • 長時間歩くときは水分補給を忘れずに。
  • 冬の早朝など、血圧が急上昇しやすい時間帯は避けましょう。日中や夕方の暖かい時間帯がお勧めです。
  • 雨など天候が悪いときは体を冷やす恐れがあるので、代わりに室内での体操などで体を動かしましょう。
  • 犬の散歩をする場合、犬が急に走り出したり止まったりすると、足腰を踏ん張ったり急激な動きが要求されます。これが意外と腰やひざの負担になりますので注意しましょう。
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3.水中運動について

画像:水の中を歩く運動

水中での運動は、浮力によって体重の負荷が減り、膝や足腰の負担が軽くなるため、膝が痛む時でも楽に動けます。運動が苦手な人や肥満の人、関節に不安がある人でも比較的安心して行えます。運動量も相当なもので、水泳ならジョギングと同等以上の運動効果が得られます。


◆水中運動による効果

  1. 水の抵抗で運動効率が高い
    水中での水の抵抗は、陸上の空気抵抗の数十倍です。ゆっくり歩いても脂肪が燃焼され、筋肉アップの効果も高くなります。
  2. 心肺機能を高める
    体全体が常に水圧を受けるため、陸上で運動するときよりも呼吸量が多くなり、心肺機能が鍛えられます。
  3. 水の浮力
    浮力によって関節にかかる負荷が減るため色々な運動がしやすくなります。また陸上と違って転んでケガをする危険性が少なく安全に行えるため、特に高齢者や膝の障害や変形が高度な人にも最適です。
  4. 水温
    水中のほどよい冷たさで血管が収縮し、体温低下を防ぐために熱が生産されます。その結果血行がよくなり新陳代謝も改善されます。

水中運動の主な長所は、「陸上での運動より運動効率が良いこと」と、「膝への影響をあまり気にせず運動できること」です。屋内プールであれば天候に関係なく利用できます。最近のスポーツジムではプールの他にお風呂やサウナも利用できたり、マッサージ機でリラックスできたりと、他の楽しみも増えて運動が継続しやすくなります。

短所としては、近くにプールのある施設がなければできないことや、ウォーキングに比べて施設への移動や準備に手間がかかること、施設の利用料が発生することなどがあります。また、水着に着替えることに抵抗を感じる人もいます。

◆水中運動の種類と特徴

種類 おすすめ度 特徴
水中ウォーキング 膝や腰などに無理な負担がかかりにくく動きも簡単。内容が単調なので飽きることも
アクアビクス水中で行うエアロビクス。水中運動と同じく、無理な負担がかかりにくい。バリエーション豊かで楽しく行える
水泳筋力と心肺機能をアップさせる運動効果はもっとも高い。その分キツく、泳ぎ方によっては膝や腰に負担をかけることもあるので注意。若い人や膝痛の予防目的の人向け
水球競技性が高く、相手と接触することもあるので不向き。本格的なトレーニング向け
水中のエアロビクス「アクアビクス」
水中でダンスを行う「アクアビクス」

水中運動のなかでも、膝や腰に痛みを抱える人にお勧めなのが、水中を歩く「水中ウォーキング」です。特別な技術も必要なく、誰でも手軽に行えます。
具体的なやり方は別項で詳しく解説しています


◆ポイント・注意点

  • 水中では歩くだけでも十分な運動量になります。最初は2〜3分歩いたら休んで呼吸を整えるというパターンを繰り返し、合計で15〜20分になるような感じで始めましょう。
  • 慣れてきたら大股で歩くようにし、後ろ歩きや横歩きなども組み合わせて行いましょう。
  • 最低でも週1回、できれば週2回行いましょう。1回あたりの運動時間は2時間以内とし、疲れをためないようにしましょう。
  • 温水でも水温は体温より低いため、長時間水中にいれば膝が冷えて血行が悪くなり逆効果になる恐れがあります。水中では常にからだを動かし、15〜30分に一度はプールから出て体を温めるようにしましょう。
「水泳」を行う場合の注意事項

水中運動「水泳」

  • 膝が痛い時は、腕の動きを中心としたクロールをする
  • 平泳ぎは膝に良くないため極力行わない。行う場合は足で強く蹴らないように気をつける
  • どの泳ぎ方でも腰を強く反らないように注意する
  • 水泳選手のような本格的な泳ぎ方はしない(必要ない)

◆関連項目


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