内軟骨腫でひざが痛むケース

内軟骨腫とは(症状・原因・治療)
膝の痛みを引き起こす可能性のある障害や病気の一つに「内軟骨腫(ないなんこつしゅ)」があります。
ここでは膝の痛みとの関係を交えながら解説します。
1.内軟骨腫が疑われる症状
内軟骨腫には、膝の痛み以外にこれといって特徴的な症状が現れません。
内軟骨腫は骨の内部から新しい骨の塊(腫瘍)が作られるもので、腫瘍が小さいうちは痛みやその他の症状も見られません。大きくならずに増殖が止まって、発生自体に気づかずにいるケースも多いです。放置しても特に問題はありません。
骨腫瘍が大きくなってくると、骨を内側から削ったり、骨を外側に押し上げてコブ状に変形させたりします。こうなってくると骨が薄く弱くなり、痛みが出てくるほかに、ちょっとした衝撃で骨折するようになります。
こうしたことから、膝が痛むために診察を受けて内軟骨腫が発見されるケースはあまりなく、骨折などのほかの障害で受診してレントゲンなどを受けた結果、ついでに判明することのほうが多いようです。
2.内軟骨腫とは 〜 特徴や原因
<腫瘍・骨腫瘍について>
1.「腫瘍(しゅよう)」とは、体の細胞が異常に増殖して大きくコブ状になったもの。腫れものやコブは医学用語で「腫瘤(しゅりゅう)」と呼ぶ。
腫瘍は人体に悪影響を及ぼさない「良性腫瘍」と、近くの組織に転移して体を破壊しながら増え続けていく「悪性腫瘍(癌(がん))」がある。皮膚や粘膜にできる悪性腫瘍が「がん」と呼ばれるのに対し、骨、軟骨、筋肉、血管、神経などに発生する悪性腫瘍は「肉腫(にくしゅ)」と呼ばれ区別される。
2.「骨腫瘍(こつしゅよう)」とは、骨組織に発生する腫瘍のこと。良性の骨腫瘍は「骨軟骨腫」、「内軟骨腫」など20種類以上がある。悪性の骨腫瘍は「骨肉腫」、「軟骨肉腫」、「ユーイング肉腫」などがあり、他器官への転移が見られる。発生頻度は良性骨腫瘍が圧倒的に多い。
骨の軟骨は本来、骨の先端部分の表面をおおっていて、やわらかく弾力性があり、関節がスムーズに動くのを助ける働きを持っています。また、成長期には軟骨組織が新しい骨を作り出して、骨を先端から長く太く成長させます。
こうした軟骨組織が「骨の内部」に発生して骨を作り出すことで、骨の内部にできる良性の腫瘍が内軟骨腫です。内骨腫(ないこつしゅ)ともいいます。
骨の内部にできる内軟骨腫に対し、骨の表面にできる良性腫瘍は骨軟骨腫(外骨腫)といいます。
◆原因
骨の内部に腫瘍ができる原因は不明です。ただし腫瘍が複数できる多発性内軟骨腫については、家族内での発生が見られるため遺伝性の要因もあると考えられています。
◆その他の特徴
- 腫瘍は手足の指の骨に発生することが多く、太ももの骨「大腿骨」などの大きな骨に見られることはあまり多くありません。
- 内軟骨腫は通常一カ所にのみ腫瘍ができる単発性のものがほとんどですが、まれに複数箇所に発生する多発性のものが見られます。この多発性内軟骨腫は、発症時は良性だった腫瘍が悪性の骨腫瘍である軟骨肉腫に変わる「悪性化」が起こる傾向があるため注意が必要です。
- 内軟骨腫が発生しやすい年齢は10〜40歳代で、若い人ほど多くなります。高齢者の場合、若い頃に一度発症し、年をとってから腫瘍が大きくなったり悪性化が起こったりして判明するケースが多いです。
3.診断・治療・予防
◆診断
大腿骨の内軟骨腫(X線写真)
エックス線撮影(レントゲン)やMRI検査による画像で、骨と腫瘍の境がはっきりと確認できます。円形に骨の侵食が見られるのが特徴です。
◆治療
痛みなどの症状が出ていない場合は特に治療の必要はなく、経過観察のみになります。
腫瘍が大きくなり、痛みが見られたり骨の侵食が進んで骨折の恐れがある場合は手術を行います。骨腫瘍をとりのぞき、空いた部分に骨を移植します。移植用の骨は体の別の部位の骨を使ったり、移植用の他人の骨や人口骨を使うこともあります。
手術後は10日前後入院したあと、骨がくっつくまでできるだけ安静を保ちます。骨が完全に再生するまでおおよそ2〜3か月かかります。
関連項目
膝の痛みを伴う骨の腫瘍