運動・スポーツ時に生じやすい膝の怪我・外傷

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スポーツ中に起こる膝のケガについて

<目 次>

  1. なぜ「膝のケガ」が多いのか
  2. 膝の使いすぎが原因で起こる「スポーツ障害」
  3. アクシデントが原因で起こる「スポーツ外傷」
  4. 主なスポーツ障害・外傷〜名称と特徴
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1.なぜスポーツ中は「膝のケガ」が多い?

運動やスポーツ活動中にケガをする箇所で、統計上最も多いのが「下半身」で、更にその中でも「足の関節や膝」が最多で、かつ重症になりやすい傾向があります。

「走る」、「ダッシュ」、「跳ぶ」、「着地」、「急停止」、「切り返し・方向転換」など、スポーツの基本動作には膝の働きが欠かせません。膝にひねりや大きな衝撃を加える動作が多く、とても大きな負荷がかかります。
特に練習や試合では日常生活においては考えられないような姿勢やバランスを強いられます。そのため膝に突発的に大きな負荷がかかったり、一定の負荷が継続的にかかり続けた結果、骨、筋肉、靭帯などを損傷して痛みが生じやすくなります。

運動中に起こる膝のケガは大きく2種類あり、一つは十分な休息をとらずに運動を続けて膝を使いすぎることで起こる「スポーツ障害」で、もう一つがアクシデント・事故による突発的なケガ「スポーツ外傷」です。それらの発生メカニズムと対処法・予防法について解説します。



2.膝の使いすぎで起こる「スポーツ障害」

スポーツ障害とは、膝に繰り返し力が加わり続けた結果、オーバーユース(使い過ぎ)が原因で起こるケガです。
特定の部位を使いすぎて疲労がたまり、筋肉などに炎症が起きて痛みが発生します。患部の"こり"、疲労骨折、剥離骨折などもスポーツ障害に含まれます。
よく見られる例では、野球のピッチャーが練習や大会で連日投げ込みを続けた結果、ひじや肩に炎症による痛み、靭帯の損傷が発生するもので、「野球肩」「野球ひじ」などと呼ばれます。似たようなものに「テニス肘」や「ゴルフ肘」もあります。

<オーバーユースとは>

日本語で「使いすぎ」という意味です。運動による負荷で組織が一部損傷すると、すぐに新しい細胞組織が作られて修復され、以前より強く生まれ変わります。しかし体を使いすぎると、組織を壊すスピードが修復するスピードよりも早くなり、それが原因で大きなトラブルが起こります。これがオーバーユースです。

現在ではスポーツの世界でも科学的な理論に基づいた練習法が中心となり、十分な休息や体のケア、練習環境の整備、フォームの改善などによって膝の酷使によるケガは昔ほど多くはなくなりました。それでも膝を使いすぎることで膝を痛めるケースは度々見られます。

◆スポーツ障害の発生率を高める要因

1.筋力の低下

膝まわりの筋肉に問題があると膝に影響が出ます。例えば太もも前面の「大腿四頭筋」には膝を伸ばす働きがありますが、ここの筋力が弱まると膝を伸ばした時に膝を支えきれなくなり、膝が不安定になったり衝撃を十分に吸収できなくなります。
また、筋力が落ちると筋肉疲労の回復に時間がかかるようになり、膝に負荷が蓄積しやすくなります。
筋力の低下は、運動不足だけでなく特定の部位を使いすぎて疲労が続いたりケガをした時にも見られるため注意が必要です。

<対策>

膝まわりを中心とした下半身の筋力・柔軟性アップ。膝への衝撃を分散・吸収し、関節にかかる負担が少なくなる

2.休息不足、栄養不足

運動によって壊れた細胞が回復するのには時間と安静が必要です。しっかり休みをとらず疲労が抜けきる前に運動を重ねると、どんどん疲労と負荷が蓄積してケガが発生します。
また、新しい細胞組織を作り出すためには、その素となる栄養素が必要です。十分な食事をとらなかったり栄養がかたよっていると、損傷した組織はなかなか回復しません。

<対策>

3.準備運動・整理運動の不足

スポーツ障害の大きな要因の一つにウォーミングアップ不足があります。
ウォームアップは軽いランニングやストレッチングなどの体温を高める準備運動です。温まって血行の良くなった筋肉は柔らかくほぐれてパフォーマンスをアップさせ、衝撃吸収力も高まります。柔軟体操によって関節の動きもスムーズになります。ウォームアップをしっかり行わないと、筋肉や関節は固くこわばったままで動きも悪く、膝への衝撃を和らげる効果も低くなり、ケガをする確率は非常に高くなります。

運動後に軽いランニングやストレッチングを行うのがクールダウン(整理運動)です。
運動中は心臓と筋肉がポンプのように動いて全身に血液を送っています。それが突然運動を止めてしまうと筋肉がポンプの役割を止めるため血流が悪くなります。すると運動によって発生した乳酸や二酸化炭素などの「疲労物質」が筋肉内に残ってしまい、疲労が残ったり筋肉が硬くなって炎症を起こしたりします。疲れが残ると次回もクールダウンをするのが億劫になり、どんどん疲れが溜まりオーバーユースとなってケガにつながります。
クールダウンはウォームアップ以上に軽視されがちです。

4.運動フォーム

良いフォームでは全身の筋肉や関節をバランスよく使えますが、悪いフォームで練習すると体の一部しか使わなかったり、余計な部位に力が入ったりします。こうした状態で練習を繰り返すと、筋肉、関節、腱などへの負荷が大きくなります。

<対策>

理想的なフォームにはある程度基本形となるものがありますが、最終的には自分の個性・体型・体格に合わせて調整してゆきましょう。自分だけで判断せず、良い指導者から客観的な指導を受けると良いでしょう。

5.練習環境、使用道具

同じ運動でも膝に影響が出る人と出ない人がいます。個人の体力や筋力の違いのほか、運動の質も関係してきます。例えばランニングをする場合、アスファルトなどの一般道よりも土のグラウンドで行った方が膝や足首への衝撃が弱く障害が起こりにくくなります。アップダウンの激しい坂道や山道の走行も膝に負担をかけます。特に下りは膝に大きな負荷がかかります。シューズなどの道具の選択も重要な要素になります。

<対策>

練習環境や使用しているシューズを見直しましょう。硬い地面やアップダウンの多いコースは膝に負担をかけるので走り過ぎないこと。シューズはゆるすぎずキツすぎず、自分のサイズに合ったものを使う。また、衝撃を吸収するクッション性の高いものを使い、靴底がすり減って斜めになっていないか確認しましょう。

6.成長期

子供の体の発達を見ると、小・中学生の頃は特に骨の成長が著しく、高校生くらいになると骨の成長が止まり、続いて筋肉が発達し始めます。小・中学生の成長期は骨の成長に筋肉や腱の成長が追いつかずアンバランスな状態になりやすいです。長くなった骨と、それに付随する筋肉とが引っ張り合い、その力によって骨の先端の軟骨部に炎症が起きたり、ひどいとはがれたりします。
成長期の子供は、筋肉を激しく使うハードな運動や長時間の運動でオーバーユースが起こりやすく、膝の障害だけでなく、成長スピードの低下や停止が見られることもあります。
有害なのは子供の体の強さや体力を超えた無理な運動です。運動自体は子供の健やかな成長に必要なものです。適度な運動、軽い負荷の運動は、組織を刺激して成長を促進させ体を強くします。

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3.アクシデント・事故による突発的なケガ「スポーツ外傷」

スポーツ外傷とは、体の特定の部位に瞬間的に大きな力が加わって起こるケガのことです。
突然に起こるため原因も明らかなケースが多く、骨折、捻挫(ねんざ)、打撲(だぼく)などがこれにあたります。サッカー、ラグビー、格闘技など、相手との接触が多いコンタクト競技で多く発生します。

◆スポーツ障害の予防法

先に述べた「スポーツ障害」の場合、膝の使いすぎや無理な使い方が原因なので未然に防ぐことができます。しかし「スポーツ外傷」は突発的なものなので、どんなに体が丈夫でもしっかり準備をしていても、発生を完全に回避することはできません。

完全な予防策はないと言えますが、筋力や柔軟性を向上させ、ウォーミングアップやクーリングダウンはしっかり行い、十分に休息をとって疲労をためず丈夫な体を維持することで、怪我をする確率を低くすることは可能です。
また、膝以外の股関節を使った動きを習得したり、足だけでなく腹筋や背筋、体幹(体の中心部)のインナーマッスル(深層筋)を強化するなどの方法も有効です。ケガの少ないプロのスポーツ選手は、体の深い部分の筋肉「インナーマッスル」が強いと言われています。

他にも、自分の行う競技の特性を知り、それによって起こるアクシデントのパターンを想定して、それに対応するための「訓練」を繰り返すことで、事故に見舞われるリスクを減らすことができます。また、競技経験を積み、相手の動きなどを予測して動くことで、アクシデントを回避することも可能です。

◆スポーツ外傷が発生したら

運動中に突発的なケガが発生したら、早急に適切な処置を行うことが大切です。処置が早ければ早いほど、症状の悪化を最小限に抑え、その後の回復を早めることができます。

打撲、捻挫、骨折などの突発的な怪我は、多くの場合、急性の関節炎を伴います。炎症が急激に広がるため、膝が腫れあがって熱をもち、急で激しい痛みを伴います。こうした症状が見られる場合、すぐに運動を中止し、膝を動かさず体重がかからない状態で休ませ、氷のう(アイスバッグ)や氷を入れたビニール袋で患部とその周辺を冷やすことが重要です。スポーツの現場では、「RICE処置」という応急処置法が基本になっています。RICEとは4つの英語の頭文字をとった言葉で、「Rest(安静)」、「Ice(冷却)」、「Compression(圧迫)」、「Elevation(挙上)」 の意味があります。


3.主なスポーツ障害・外傷

スポーツ中に発生することが多いため、一般にスポーツ障害・外傷として認知されているものを紹介します。

3-1.膝の使いすぎによる経過性の障害

◆腸脛靭帯炎(ランナー膝・ランナーズニー)

大腿骨(太ももの骨)の外側に位置する靭帯「腸脛靭帯」に炎症が起こるもの。名前のとおり陸上競技の長距離選手に多く見られる

【主な症状・特徴】 【発症しやすいスポーツ】

◆膝蓋腱炎(ジャンパー膝・ジャンパーズニー)

膝の皿とすねの骨をつなぐ膝蓋腱が傷つき炎症を起こしたもの。重症例では腱が完全に切れる「膝蓋腱断裂」が生じる。名前のとおりジャンプ競技やランニングで良く見られる

【主な症状・特徴】 【発症しやすいスポーツ】

◆鵞足炎(がそくえん)

膝の内側の腱に炎症が起こり痛みを感じる障害

【主な症状・特徴】 【発症しやすいスポーツ】

◆タナ障害(タナ症候群)

膝の皿と大腿骨(太ももの骨)の間にあるヒダ状の膜(通称「タナ」)が炎症を起こしたもの。膝の屈伸と打撲を伴うスポーツ種目によく見られる

【主な症状・特徴】 【発症しやすいスポーツ】

◆オスグッド病

ひざの皿の下あたりの骨に、変形や膨張(ふくらみ)などの異常が起き、刺激に対して異常に敏感になるもの

【主な症状・特徴】 【発症しやすいスポーツ】

◆膝蓋軟骨軟化症

膝蓋軟(ひざの皿)の裏側の軟骨が、大腿骨(太ももの骨)とこすれてすり減り、炎症を起したもの。軟骨の軟化・膨隆・亀裂などの変形を生じる。マラソン、ジャンプ系の競技で発症しやすい

【主な症状・特徴】

◆離断性骨軟骨炎

骨の先端にある軟骨部分が壊死して骨の一部といっしょにはがれるもの。野球ひじ、テニスひじなども該当する

【主な症状・特徴】 【発症しやすいスポーツ】

3-2.アクシデントなど急性のケガによるもの

◆半月板損傷(はんげつばんそんしょう)

膝関節でクッションの役割を果たす軟骨組織「半月板」が、大きな負荷によって欠けたり断裂したりするもの。多くは膝が無理にひねられたり伸ばされたときに起こる

【主な症状・特徴】 【発症しやすいスポーツ】

◆靭帯損傷(じんたいそんしょう)

靭帯の一部が傷つき、裂けたり破けてしまう障害。明らかな損傷が見られない軽度なものが「捻挫(ねんざ)」で、重度のものには靭帯が完全に切れてしまう「靭帯断裂」などがある

【主な症状・特徴】 【発症しやすいスポーツ】

◆その他のひざの外傷

骨折、捻挫、打撲、脱臼など。ひざ関節内の組織(関節包など)が損傷しているケースもある。

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