膝の痛みの原因を探る - 症状1「ひざの動きの悪さを伴うケース」

膝の動きに異常が発生しうる病気・障害
膝の痛みを生じる病気や障害の中には、以下のような膝の動きに関する何らかの異常を伴うものがあります。
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現れる症状の内容や程度には個人差がありますので、あくまで参考とするに留めてください。
1.様々な原因により発生するもの
◆関節ねずみ(関節内遊離体)
関節の骨や軟骨が一部欠けたりはがれたりして、破片が関節内を動きまわるもの
- 突然、膝の曲げ伸ばしができなくなり、膝に激しい痛みを感じる
- 膝に何か挟まっているような感じがして動かしづらい
- スポーツや事故による骨折、骨の破壊・変形を伴う病気など
◆関節水症(かんせつすいしょう)
関節内の液体「関節液(滑液)」の量が異常に増える病状で、いわゆる"膝に水がたまる"状態のこと
- 膝の腫れや痛み、ひざのだるさを感じる
- 膝の皿を押した時にプヨプヨと浮いているような感じで形が分かりにくい
- 膝の表面が柔らかくなり、中に何か入っているような異物感がある
- 膝のぐらつきや動きの悪さ
- 水(関節液)の代わりに血がたまるケースもある
- 膝の軟骨や骨がすり減ったカスや、骨が表面からはがれたカケラによる刺激
2.主にスポーツ、怪我(けが)、事故などを原因とするもの
◆半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
膝関節でクッションの役割を果たす軟骨組織「半月板」が、大きな負荷によって欠けたり断裂したりするもの。多くは膝が無理にひねられたり伸ばされたときに起こる
- 膝が引っかかったような痛みを感じる
- 膝の曲げ伸ばしができない(ロッキング状態)
- 膝に力が入らない
- 膝関節部がはれて膨らんでいる
- スポーツや事故による膝への負荷の蓄積
◆離断性骨軟骨炎
骨の先端にある軟骨部分が壊死して骨の一部といっしょにはがれるもの。野球ひじ、テニスひじなども該当する
- 膝が一定以上曲げ伸ばせない、全く動かないなど、急に動きが悪くなり、同時に膝に激しい痛みを感じる
- 膝を動かした時に痛み、安静時はほとんど痛まない
- 膝に何か挟まっているような感じがする
- スポーツや事故による膝への負荷の蓄積
◆タナ障害(タナ症候群)
膝の皿と大腿骨(太ももの骨)の間にあるヒダ状の膜(通称「タナ」)が炎症を起こしたもの。膝の屈伸と打撲を伴うスポーツ種目によく見られる
- スポーツ時などに膝の皿の内側に痛みやひっかかり感がある
- 膝を動かした時に何か挟まるような感じがする。その際に「コキッ」「コツッ」といった音がすることもある
- 膝の皿のあたりに違和感や重苦しさを感じる
- 10〜20代の若い人に多く発症し、男性よりも女性の割合が高い
- 膝の曲げ伸ばしの繰り返しでタナが骨のでっぱりとこすれ合うことによる
◆膝蓋軟骨軟化症
膝蓋骨(ひざの皿)の裏側の軟骨が、大腿骨(太ももの骨)とこすれてすり減り、炎症を起したもの。軟骨の軟化・膨隆・亀裂などの変形を生じる。マラソン、ジャンプ系の競技で発症しやすい
- 膝を動かす時に、ひざの皿周辺に痛みを感じる。ゴリゴリと音がすることもある
- ひざの皿を押すと痛む
- ひざの皿の違和感・不安定感(皿が引っかかる感じや、膝を伸ばす時にきしむ等)
- 10〜20代の若い女性に多く発生する
- 膝蓋骨への負荷の蓄積(膝の使いすぎ、外傷(ケガ)、筋力不足、X脚(内股)、不自然な歩き方など)
3.主に加齢や長年の膝の使用による骨の劣化を原因とするもの
◆変形性膝関節症
ひざ関節の骨や軟骨がすり減ったりもろくなったりして変形した状態
- 膝を動かしはじめる時の痛み(立つ、座る、歩くなど)
- 膝の動きの制限(こわばって動きが悪い、一定以上曲げ伸ばしできない等)
- 膝がきしむ、膝に水がたまる
- 中高年の膝の痛みの原因として最も多くみられる
- 加齢や膝への負荷の蓄積による骨の劣化
◆膝蓋大腿関節症
ひざの皿(膝蓋骨)と太ももの骨による関節「膝蓋大腿関節」に炎症が起こるもの
- ひざの皿の上部あたりに痛みを感じる
- ひざの皿が大きく動くようなズレているような感じがする
- ひざの腫れやこわばりが見られる
- 加齢や膝の使い過ぎによる骨の劣化。膝蓋骨の脱臼(だっきゅう)により起こることもある
4.主に病気や生体機能の異常を原因とするもの
◆骨軟骨腫(こつなんこつしゅ)
骨の表面にできる良性の腫瘍(しゅよう)
- 膝の周辺に骨のように硬い腫れやこぶが見られる
- 膝の痛みや、膝関節の動きの悪さ
- 10代の成長期の若者に多く見られる(全体の約半数)
- 腫瘍ができる原因は不明。一度にたくさんの腫瘍ができる「多発型」は遺伝的な要因もある
◆色素性絨毛結節性滑膜炎
関節の内側を覆う「滑膜」の組織が異常に増殖して塊ができ、出血を繰り返す病気
- ひざの関節が腫れてズキズキと鈍い痛みが見られる
- 関節がひっかかるような感じや、一定以上曲げ伸ばしできない等の動きの制限がある
- 関節内に血がたまり、膝に熱感やだるさが見られる
- 原因不明
◆大腿骨頭壊死
大腿骨(太ももの骨)の先端が血行悪化で破壊され変形する病気
- 膝を動かした時の痛み(歩行、階段の上り下りなど)
- 膝の動きの制限(動きが悪い、一定以上曲げ伸ばしができない)
- 足をひきずって歩く(跛行(はこう))
- 中高年以上に比較的多い
- 原因不明なものが多く、ステロイド薬やアルコール摂取量が関係しているケースも
◆神経病性関節症(シャルコー関節)
脊髄の中を通る神経に障害が起こり、下半身の感覚が鈍って痛みなどを感じにくくなる病気
- 関節が異常に腫(は)れる
- 関節がぐらつき、不安定感がある
- 高度な関節の変形・破壊が見られる
- 膝に水がたまる
- これらの症状があるにもかかわらず痛みをあまり感じない
- 糖尿病、梅毒、脊髄の病気など、神経障害を起こす病気にかかることで起こる
◆結核性関節炎
結核菌が関節内に侵入して炎症を生じさせる病気
- 膝関節の軽い痛み(特に夜間に痛みが増す)
- 膝がこわばり動きが悪くなる
- 膝に水がたまる
- 発熱、全身のだるさ、食欲不振、体重減少など風邪(かぜ)のような症状
- 肺結核の合併症としての発症、過去に患った結核の後遺症、結核患者との接触による感染など
◆滑膜骨軟骨腫症
関節内の滑膜に腫瘍(しゅよう)ができ、骨化したカケラ(遊離体)を大量に発生させる病気
- 突然、膝の曲げ伸ばしができなくなり、膝に激しい痛みを感じる
- 膝に何か挟まっているような感じがして動かしづらい
- 膝に水がたまる
- 発生頻度の少ない珍しい病気
- 詳しい原因は不明。滑膜組織の遺伝子の突然変異との説もある
◆血友病(けつゆうびょう)
人に本来備わっている「出血時に血液が固まって止血する機能」が遺伝子の異常によって失われている先天性(生まれつき)の病気。
わずかなケガでも出血しやすく、一度出血すると自然に止血することが困難。出血は皮膚上だけでなく、筋肉内、関節内、皮下など体内でも繰り返し起こる。
- 外部からの刺激によって出血しやすく、血が止まらない
- 関節内で何度も出血が起こると、関節の曲げ伸ばしができなくなることがある
- 血液を凝固させる因子を静脈注射する「補充療法」によって治療を行う
- 血友病の病的遺伝子を持った女性から産まれた男性に発病するケースがほとんど。染色体の構造から女性に発症することは極めて稀で、患者の99%は男性。