膝の痛みの原因を探る - 症状3「ひざに水が溜まるケース」

膝に水や血液がたまる病気・障害
膝の痛みを生じる病気や障害の中には、以下のような症状を伴うものがあります。
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現れる症状の内容や程度には個人差がありますので、あくまで参考とするに留めてください。
膝に水がたまる「関節水症」
◆関節水症(かんせつすいしょう)
関節内の液体「関節液(滑液)」の量が異常に増える病状で、いわゆる"膝に水がたまる"状態のこと
- 膝の腫れや痛み、ひざのだるさを感じる
- 膝の皿を押した時にプヨプヨと浮いているような感じで形が分かりにくい
- 膝の表面が柔らかくなり、中に何か入っているような異物感がある
- 膝のぐらつきや動きの悪さ
- 水(関節液)の代わりに血がたまるケースもある
- 膝の軟骨や骨がすり減ったカスや、骨が表面からはがれたカケラによる刺激
関節水症は様々な膝の障害において見られる症状ですが、大きく分けて、「水(関節液)がたまるもの」と「血液がたまるもの」の2種類があります。
1.水(関節液)がたまるもの
◆変形性膝関節症
ひざ関節の骨や軟骨がすり減ったりもろくなったりして変形した状態
- 膝を動かしはじめる時の痛み(立つ、座る、歩くなど)
- 膝の動きの制限(こわばって動きが悪い、一定以上曲げ伸ばしできない等)
- 膝がきしむ、膝に水がたまる
- 中高年の膝の痛みの原因として最も多くみられる
- 加齢や膝への負荷の蓄積による骨の劣化
◆関節ねずみ(関節内遊離体)
関節の骨や軟骨が一部欠けたりはがれたりして、破片が関節内を動きまわるもの
- 突然、膝の曲げ伸ばしができなくなり、膝に激しい痛みを感じる
- 膝に何か挟まっているような感じがして動かしづらい
- スポーツや事故による骨折、骨の破壊・変形を伴う病気など
◆関節リウマチ
全身の関節に炎症が広がり、関節が壊れてしまう病気
- 膝、指、手首、ひじなど、多くの関節がこわばり動かしにくい。手や手首の関節から始まる場合が多い
- 指、手首、ひざなど、左右両方に腫れや痛みがある
- 安静時でも痛みを感じ、動くとさらに強く痛む
- 30〜50歳代の人が多く、特に女性は男性の約3倍
- ウイルスや細菌から体を守る作用『免疫システム』に原因不明の異常が発生することによる
◆離断性骨軟骨炎
骨の先端にある軟骨部分が壊死して骨の一部といっしょにはがれるもの。野球ひじ、テニスひじなども該当する
- 膝が一定以上曲げ伸ばせない、全く動かないなど、急に動きが悪くなり、同時に膝に激しい痛みを感じる
- 膝を動かした時に痛み、安静時はほとんど痛まない
- 膝に何か挟まっているような感じがする
- スポーツや事故による膝への負荷の蓄積
◆神経病性関節症(シャルコー関節)
脊髄の中を通る神経に障害が起こり、下半身の感覚が鈍って痛みなどを感じにくくなる病気
- 関節が異常に腫(は)れる
- 関節がぐらつき、不安定感がある
- 高度な関節の変形・破壊が見られる
- 膝に水がたまる
- これらの症状があるにもかかわらず痛みをあまり感じない
- 糖尿病、梅毒、脊髄の病気など、神経障害を起こす病気にかかることで起こる
◆結核性関節炎
結核菌が関節内に侵入して炎症を生じさせる病気
- 膝関節の軽い痛み(特に夜間に痛みが増す)
- 膝がこわばり動きが悪くなる
- 膝に水がたまる
- 発熱、全身のだるさ、食欲不振、体重減少など風邪(かぜ)のような症状
- 肺結核の合併症としての発症、過去に患った結核の後遺症、結核患者との接触による感染など
◆滑膜骨軟骨腫症
関節内の滑膜に腫瘍(しゅよう)ができ、骨化したカケラ(遊離体)を大量に発生させる病気
- 突然、膝の曲げ伸ばしができなくなり、膝に激しい痛みを感じる
- 膝に何か挟まっているような感じがして動かしづらい
- 膝に水がたまる
- 発生頻度の少ない珍しい病気
- 詳しい原因は不明。滑膜組織の遺伝子の突然変異との説もある
2.血液がたまるもの
関節水症を伴う病気・障害のうち、血液がたまるのは内出血を伴うスポーツ障害が主になります。
◆半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
膝関節でクッションの役割を果たす軟骨組織「半月板」が、大きな負荷によって欠けたり断裂したりするもの。多くは膝が無理にひねられたり伸ばされたときに起こる
- 膝が引っかかったような痛みを感じる
- 膝の曲げ伸ばしができない(ロッキング状態)
- 膝に力が入らない
- 膝関節部がはれて膨らんでいる
- スポーツや事故による膝への負荷の蓄積
◆靭帯損傷(じんたいそんしょう)
靭帯の一部が傷つき、裂けたり破けてしまう障害。明らかな損傷が見られない軽度なものが「捻挫(ねんざ)」で、重度のものには靭帯が完全に切れてしまう「靭帯断裂」などがある
- 膝を強く打ったり激しく動かした時に膝に激しい痛みがあった。断裂時は「ゴリッ」「ポキッ」「ブチッ」といった音がすることも
- 膝のぐらつき・不安定感
- 歩行時に突然膝がガクンと落ち込む
- スポーツや事故で膝に強い衝撃・負荷がかることによる
◆その他のひざのケガ
関節内の組織(関節包など)の損傷、関節内の骨折など
◆色素性絨毛結節性滑膜炎
関節の内側を覆う「滑膜」の組織が異常に増殖して塊ができ、出血を繰り返す病気
- ひざの関節が腫れてズキズキと鈍い痛みが見られる
- 関節がひっかかるような感じや、一定以上曲げ伸ばしできない等の動きの制限がある
- 関節内に血がたまり、膝に熱感やだるさが見られる
- 原因不明
◆血友病(けつゆうびょう)
人に本来備わっている「出血時に血液が固まって止血する機能」が遺伝子の異常によって失われている先天性(生まれつき)の病気。
わずかなケガでも出血しやすく、一度出血すると自然に止血することが困難。出血は皮膚上だけでなく、筋肉内、関節内、皮下など体内でも繰り返し起こる。
- 外部からの刺激によって出血しやすく、血が止まらない
- 関節内で何度も出血が起こると、関節の曲げ伸ばしができなくなることがある
- 血液を凝固させる因子を静脈注射する「補充療法」によって治療を行う
- 血友病の病的遺伝子を持った女性から産まれた男性に発病するケースがほとんど。染色体の構造から女性に発症することは極めて稀で、患者の99%は男性。