変形性股関節症でひざが痛むケース

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変形性股関節症とは(症状・原因・治療)

膝の痛みを引き起こす可能性のある障害や病気の一つに「変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)」があります。
ここでは膝の痛みとの関係を交えながら解説します。

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1.変形性股関節症が疑われる症状

ひざと股関節の痛み・歩行障害

膝の痛みのほかに以下のような特徴や症状が見られる場合、変形性股関節症が発症している可能性があります。


  • 股関節、お尻、太もも、ひざの上などに痛みがある
  • 股関節の動きが悪く、曲げ伸ばしがしづらい。または動かせる範囲が狭い
  • 足を引きずって歩く(跛行)

変形性股関節症に伴う症状は、病気が進行するにつれて変わっていきます。

病気の初期は、股関節・お尻まわり・膝の上部などにこわばりや重い感じがあるほか、運動した後などにこうした箇所に鈍い痛みを感じます。痛みは数日でおさまります。
病状がやや悪化すると、立ったり座ったり歩いたりといった動作の初め、動きはじめに痛みを感じる「初動痛」が見られるようになります。
更に悪化すると、動いている間は常に痛みを感じるようになり、最終的には歩くのもつらく安静時でも痛みが治まらなくなります。股関節の動きの制限も大きくなりあまり動かせなくなります。


2.変形性股関節症とは 〜 特徴や原因

骨盤と太ももの間の関節である「股関節」を形成している骨や軟骨がすり減ったり、関節の形が変わってしまうものが変形性股関節症です。放置すると痛みによって足を引きずって歩くようになります。
30歳代後半〜50歳代の人に多く、特に女性に多く見られます。

◆原因

症状の進行
(クリック拡大)
図解:変形性股関節症が悪化する過程

過去に股関節の異常や病気を経験したことのある人が、その後成人してから後遺症として発症する二次性のケースが多く、全体の8割程度を占めています。過去に病気をした時にしっかりと治療が行われていないと、その後骨が正常に発育せずに変形してしまうのです。

原因がはっきりしない一次性のケースは日本ではあまり見られず、逆に欧米では原因の大半を占めます。加齢に伴う骨の老化・劣化によって発症するものと考えられています。

後遺症として変形性股関節症を誘発する病気や障害

  1. ペルテス病
    3〜12歳くらいの子どもに起きる病気で、特に5〜7歳の活発な男児に多く見られます。何らかの原因で大腿骨の骨頭(ももの骨の股関節側の先端)へ血液が循環しなくなることで骨の破壊・変形が起こります。

  2. 先天性股関節脱臼
    生まれつき股関節の片方または両方が脱臼(だっきゅう)している病状で、はっきりとした原因は不明です。女児が男児の6〜10倍も多いといわれます。「発育性股関節脱臼」とも呼ばれます。

  3. 臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)
    股関節の骨盤側のくぼみ「臼蓋」の形が生まれつき小さい疾患です。これにより臼蓋と大腿骨(足の骨)がうまく噛み合わず、股関節に炎症が起きて痛みを引き起こします。

  4. 大腿骨頭すべり症(だいたいこつとうすべりしょう)
    大腿骨(太ももの骨)の股関節側の先端の丸まっている部分を「骨頭」といいます。この骨頭がズレる病状です。体質や肥満、成長ホルモン異常などでズレが起こりやすく、股関節周辺が重くだるい感じがしたり、痛みが見られることもあります。発症例の少ない病気ですが、比較的10〜14才の思春期の男子に多く見られます。
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3.診断・治療・予防

◆診断

股関節周辺の痛みや動きの悪さ、過去の股関節の病気や障害の有無について問診で確認します。
変形性股関節症が疑われる場合は、X線撮影で患部の骨の変形を確認して診断を下します。
より詳しい病状の確認や、似た症状を持つ他の病気との識別のために、血液検査、CTスキャン、MRIなどの検査を行うこともあります。

◆治療・予防

基本的に変形性ひざ関節症の治療法と同じです。
症状が軽く、日常生活に大きな支障が出ていないようであれば、まずは手術を行わない「保存的療法」で対処します。ある程度症状の重いケースでは手術も検討されます。

1.保存的療法(手術以外の治療法)

股関節を保護して痛みを軽くする装具

痛みそのものを軽減させる目的では、患部を温めて血行を良くする温熱療法、湿布・塗り薬・消炎鎮痛剤の服用といった薬物療法などが行われます。
患部への負担を軽減する治療としては、関節周辺を器具で固定する装具療法、股関節の柔軟性を高めたり、周囲の筋力を高める運動療法が中心となります。

痛みのある場所を無理に強く動かすと症状を悪化させますが、関節がこわばって動きの制限が見られる場合は、無理のない範囲である程度動かすことで関節の可動域を広げ、柔軟性を高めて痛みを軽くできます。

2.外科的療法(手術)

骨の破壊や変形が進み、保存的療法ではあまり効果がないと判断される場合や、日常生活に支障をきたしている場合は手術を行います。


  • 関節の形を変える手術
    股関節を構成する骨の一部を切りとって位置をずらすことで負荷を減らし痛みを軽減します。切り取る部分によって「寛骨臼回転骨切術」、「骨盤骨切り術」、「内反骨切術」、「外反骨切術」など幾つかの種類があります。

  • 関節を取り替える手術(人工股関節置換術)
    画像:膝の人工関節
    股関節の一部または全部を、金属やポリエチレンでできた人工関節に置き換える方法で、痛みなどの症状がすっかり解消される効果の高い治療法です。ただし、激しく動くことでゆるみや故障が発生したり、人工関節の感染のリスクもあるため、特に若い人についてはできる限り骨切り手術などの他の手術法が適用されます。
    人工関節には寿命(10年前後)があるため、定期的なメンテナンスや、使えなくなった際の再手術が必要です。

3.生活習慣の改善

保存的療法や手術による治療を進めると同時に、日常生活における股関節の負担を減らす対策を行います。

  • 「股関節に負担をかける姿勢や動作を避ける」
    歩く時は杖を使って関節の負担を減らすなど。
  • 「肥満を解消して体重による負荷を軽くする」
    十分な栄養は摂取しつつ、カロリー制限と適度な運動を行います。過度のダイエットや激しい運動は逆効果です。
  • 「骨を強くする」
    骨が弱い人や骨粗鬆症の人は、軽めのウォーキングなど膝の負担が少ない運動を定期的に行い、カルシウム、ミネラル、タンパク質が豊富な食生活を心がける
  • 「痛みがある時は無理をせずに安静を心がける」
  • 「腰まわりを冷やさない」
    毎日長めに入浴したり、体を締め付けない毛糸のサポーターを利用するなどして血行を良くする。

変形性股関節症は放置すると症状が悪化するのが早いです。股が少し痛い、少し具合がおかしいと感じたら早めに整形外科を受診しましょう。早期発見、早期治療が大事です。

関連項目


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股関節周辺の構造
(クリックで拡大)画像:股関節・仙腸関節の図解と各部名称

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画像:膝関節・骨・靭帯の図解と各部名称
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