薬を使ったひざの痛みの治療

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薬を用いる治療法『薬物療法』について

薬物療法とは、薬の持つ様々な効果・効能によって主に現在生じている痛み一時的に和らげたり解消したりする治療法です。
膝の疲労やケガによる急な痛みや一時的な痛みなら、薬の効果で痛みの元である炎症を鎮めることで解消することができます。骨や軟骨の変形、靭帯の損傷などを解消するような効果はありません。
使用される薬の形状には、シップや軟膏などの「外用薬」、口から飲み込むタイプの「内服薬」、他にも膝関節内部に薬を注射する方法もあります。
ここではこうした薬の種類ごとの特徴や具体的な効果を解説します。

<目 次>

  1. 痛み止めの薬「消炎鎮痛剤」
  2. 「薬物注射」について
  3. 一覧表「薬の種類と特徴」
  4. 「サプリメント」について
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1.痛み止めの薬「消炎鎮痛剤」

膝の痛みの治療で最も多く使用されるものが「消炎鎮痛剤」です。
名前のとおり「炎症」を鎮める効果をもつ薬です。炎症とは体の組織が損傷したり何らかの刺激を受けた際に起こる自然な防御反応で、血管が広がることによって患部が赤く腫れあがったり、熱を帯びたり、ズキズキ傷んだりします。痛みの元となる炎症が静まれば痛みも治まります。

一般に痛み止めの薬という場合、この消炎鎮痛剤のことを指します。病院でも最初に処方されることが多い薬です。市販の薬でいえば「バファリン」や「ロキソニン」などが有名です。

◆こんな痛みに効果的

消炎鎮痛剤によって膝の痛みの完治が見込めるのは、短期間に膝を酷使したことで膝が疲労して起こる筋肉痛のような疲労性の痛みや、軽いねんざや打撲などのケガによって生じる痛みです。つまり短期間に大きな負荷がかかることで生じる「急な痛み」「一時的な痛み」です。一度炎症が治まれば基本的に痛みは再発しません。

逆に、長年ひざを使い続けたり、歳をとって膝が老化するなどして、膝関節の骨や軟骨が変形して痛みを生じているようなケース、つまり「慢性的な痛み」に対しては、炎症と痛みの根本的な原因である骨や軟骨の障害を治せるわけではないので、一時的に苦痛を消したり和らげたりする目的で使用されます。薬の効果が切れれば痛みは再発します。

◆成分

副作用が強めの「ステロイド」を含まない、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が主に使われます。
成分はセレコックス、ロキソニン、インドメタシン、ボルタレンなどです。その他、解熱作用もあるアセトアミフェン、オピオイド系の鎮痛薬(モルヒネなどの麻薬)、痛みを伝える神経の活動を抑える鎮痛薬ノイロトロピンなどがあります。

◆形状

薬剤の形・種類

1.内服薬(飲み薬)や座薬

薬が腸から吸収され、痛みを抑える効果は最も大きく、特に"急な痛み"によく効きます。
ほかにも、熱を下げる「解熱効果」も得られる、関節痛以外にも頭痛や腹痛などの痛み全般に効果がある、効果が全身に及ぶといったメリットがあります。
効果が高い反面、副作用も若干多くなります。内蔵にやや負担がかかり、胃痛・胸焼け、食欲不振が見られやすく、胃腸薬の併用が必要になる場合もあります。頻度は低いですが「ぜんそく、腎障害、肝障害」を引き起こす例もあります。
副作用は薬の長期服用や、他の薬やサプリメントとの飲み合わせによって発症しやすくなります。胃が弱い人、胃潰瘍の病歴がある人、ぜんそくのある人などは、病院で医師の診断を受けて自分の症状に合ったものを処方してもらう方が良いでしょう。
内服薬は薬局などでも市販されていますが、服用時は注意書きをよく読んで用法をしっかり守る必要があります。どの薬が良いか分からない場合は薬局の薬剤師に相談し、ついでに服用法も確認しておくと良いでしょう。

内服薬や座薬は、痛みや炎症が出ている時だけ使用するものであって、心配だから事前に服用しておくといった使い方はお勧めできません。ある程度落ち着いたら「痛い時だけ使う」といった使い方をしましょう。

<外用薬との併用がより効果的>

内服薬を使う場合、塗り薬やシップなどの外用薬も一緒に併用した方がより効果が高まります。
関節内部の痛みに対しては内服薬の方が効くのですが、関節周囲の痛みに対しては皮膚から浸透させたほうが薬が早く届きやすいからだと考えられます。

<座薬(坐薬)について>

肛門から腸内に挿入する坐薬

座薬は肛門または女性の膣に挿入して用いる錠剤タイプの薬剤です。
「内服薬より効き目が強い」、「胃腸を通過しないため早く効く(速効性がある)」、「重い副作用が起こりにくい」という特徴があります。慣れないと使いにくく、また痔や直腸に炎症がある人は使えないという欠点もあります。
特に痛みが強い人、胃腸に病気・障害があって内服薬が使えない人によく処方されます。


2.外服薬

軟膏、クリーム、湿布(シップ)などの塗り薬タイプの薬です。腫れや痛みのある箇所に塗り貼りするだけですので、手軽で簡単かつ長期間の使用も可能です。
薬の成分を皮膚から浸透させることで効果を得ますがが、内服薬ほど血管の中に入っていかないため痛みを抑える効果は劣ります。また、薬を塗った範囲にしか効果はありません。ある程度症状が重い膝の障害に対しては、効き目の強い内服薬や、薬以外の治療法も併用する必要があります。
反面、副作用は小さめで、肌のかぶれなどが主です。それでも使いすぎると胃腸障害を起こすケースもあります。

病院で処方される薬も、薬局やドラッグストアで市販されている薬も、成分は殆ど同じですが、後者の方が配合量が少ないため医師の処方するものほどの効果はありません。

<局所使用では効果的>

効き目の大きさは内服薬に劣りますが、痛みのポイントが関節内ではなく、関節周辺、特に皮膚に近い箇所であるほど内服薬よりも効果的で速効性もあります。

<湿布(シップ)について>

患部を温める効果のある「温湿布」と、逆に冷やすための「冷湿布」があります。どちらも筋肉の温度まで大きく変えるほどではないため、基本的にどちらを使ってもかまいません。快感が脳に伝わることで鎮痛作用が高まるため、気持ち良く感じられる方を使いましょう。ただし、骨折や打撲のように急激な炎症によって「急で激しい痛み」や「腫れ」が見られるケースでは冷やすのが原則ですから、温シップは避けたほうがよいでしょう。一方、血行不良により慢性的な痛みが生じている場合には、トウガラシ成分(カプサイシン)の血流を増やす作用を期待して温シップを使ってみるのもよいでしょう

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2.薬物注射について

膝関節内へ薬剤を注射する治療法

膝関節内に注射器で直接薬を流しこむ治療法です。
注射される薬剤には「ステロイド系抗炎症薬」や「ヒアルロン酸」があります。


◆ステロイド系抗炎症薬の注射

外用薬や内服薬では治まらないほど炎症が強い場合の治療法の一つとして、膝関節内へのステロイド薬の注射があります。
ステロイド薬は内服薬以上に消炎鎮痛効果は高いのですが、その分、副作用の種類も発生頻度も多いため、頻繁に使われるものではありません。

※ステロイドとは
腎臓の隣にある「副腎」で分泌されるホルモンの一つで、副腎皮質ホルモンとも呼ばれています。 炭水化物・脂質・タンパク質の代謝制御、免疫系の制御、炎症の抑制など様々な働きを持ち、その有効成分を化学合成したものがステロイド剤です。医薬品として、炎症性の病気、免疫系の病気、アレルギー性の病気などに広く用いられています。(例:膠原病、関節リウマチ、ネフローゼ、喘息、アレルギー症状、めまい、耳鳴りなど)

<副作用の例>

  • 長期摂取によるもの
    →動脈硬化、高脂血症、高血圧、不整脈、筋力低下・筋肉痛、白内障・緑内障、副腎不全
  • 大量摂取によるもの
    →感染症、糖尿病、胃潰瘍、精神障害

◆ヒアルロン酸の注射

ドロドロとした液状のヒアルロン酸

膝関節内には少量の「関節液」という透明で粘り気のある液体があり、潤滑油のように関節がスムーズに動くのを助け、関節に滑らかさと弾力性を与えているほか、関節軟骨に栄養を与えるなど重要な役割を果たしています。
この関節液の主成分が「ヒアルロン酸」です。歳をとるほどその量は減少し、関節液も減少して滑らかさを失った関節軟骨はすり減りやすくなって炎症・痛みが強まります。
そこで外部から注射でヒアルロン酸を注入して関節液を補充することで、軟骨の破壊を防ぎ炎症を抑える治療法です。ヒアルロン酸の関節注射は外来で受けられます。週1回、計5回程度行われるのが一般的です。注射が適しているのは関節の軟骨の破壊が軽度〜中程度ぐらいの人です。

<長所>

  • 炎症を抑えることで痛みが和らぐだけでなく、軟骨の破壊を防ぎ、膝の動きを良くする。内用薬や外用薬は炎症や痛みを抑える効果はあっても、軟骨そのものには作用しない。
  • 関節内部だけでなく、押してみて痛みを感じる部分に注射しても効果がある
  • 副作用がほとんどない(注射による感染症のリスク程度)

<ヒアルロンとはどんな物質?>

  • 関節液などに含まれる物質。透明でトロッとしている
  • 関節の弾力性を生み出し、関節軟骨の栄養になる
  • 皮膚や眼球などにも含まれている

3.一覧表「薬の種類と特徴比較」


分類 外用薬 内服薬・座薬 薬物注射
成分 非ステロイド性抗炎症薬 非ステロイド性抗炎症薬 ステロイド系抗炎症薬、ヒアルロン酸
痛みを抑える効果 小〜中程度 大きい 非常に大きい
主な効能 ・炎症を抑え痛みを和らげる
・患部を温める、または冷やす
・炎症を抑え痛みを和らげる
・解熱作用
・炎症を抑え痛みを和らげる
・膝関節の動きを良くする
・軟骨の破壊を防止する
副作用の大きさ ほとんど無いか小さい 中程度〜大きい ステロイド薬は大きく、ヒアルロン酸はほとんど無い
主な副作用 かぶれ 胃痛・胸焼けなどの胃腸障害、食欲不振 高血圧、高脂血症、高血糖、不整脈など
長所 ・塗り貼りだけで済み手軽に使える
・副作用が少なく症状も軽い
・長期間使用できる
・多くが市販されており、安価に手に入りやすい
・外用薬に比べて鎮痛効果が高く、全身に作用する(座薬は内服薬より効き目が早い)
・飲むだけなので手軽に使える
・関節痛、頭痛、腹痛など痛み全般に効果がある
・ステロイド薬は鎮痛効果が非常に高い
・ヒアルロン酸は副作用が殆ど無く、関節機能の回復効果もある
短所 内服薬に比べて効果は弱く、効果があるのは塗布した部分に限られる ・副作用が比較的起こりやすい
・服用量や使用期間に注意が必要
・ステロイド薬は副作用が起こりやすく処方に注意を要する

4.サプリメントについて

膝の痛みに効くとされるサプリメント

ひざの痛みに効くとされるサプリメントが多くのメーカーから非常に数多く販売されています。「グルコサミン」や「コンドロイチン」といった成分を含んだものが主で、テレビのCMや雑誌などで「ひざの痛みに有効」、「長年苦しんできた痛みが無くなった!」といった宣伝文句とともに紹介されています。本当にそうした大きな効果が得られるのでしょうか。

結論から言うと、症状によっては一定の効果が認められているようです。ただし、軟骨を再生したり、慢性的な痛みや重い症状を治すといった大きな効果は期待できないと思ったほうがよいでしょう。
これらのサプリメントの効能や注意点については別項で詳しく解説しています

関連項目


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